非常に、面白かったともに、ありがたい本でした。
私自身最近、「どうして自分はKindleから自分で本を出せないんだろう?」と思っていたんですが、「まあ今すぐ考えなくてもいいでしょう。後で考えましょう」と言っているうちに月日が経っていて、その答えがこの本に書いてあったのです。
これからは「佐々木さんはどうしてKindleで自分で書かないの?」とたずねられたら、「それはまつもとあつしさんの本を読んでください」と言えば済むわけです。
もちろんまるまるココにあるまま、というわけではないですし、そんなんだったら気持ち悪いくらいですが、おおすじこのままで私の言いたいことは代弁されています。
いちおうあえて断っておくなら、私がたとえばSNSをやっているのは、紙で出した本を「売るため」には現状ほど遠い。なぜなら、まつもとあつしさんが知っていることを、私は知らなかったせいです。本書によれば、「出版社のマーケティング機能は驚くほど低いと言わざるを得ない」そうですが、私は「マーケティングなんて、出版社さんに任せておけばいいでしょう」くらいに思っていたので、ツイッターで自分でつぶやくのなぞ「いちおうやっておきます」くらいに、ものすごく軽く考えていたわけです。
早い話が「焼け石に水」というのは変ですが、まあそういうような「やらないよりはなんでもやっておいた方がいいかも」くらいの意味しか認めておりませんでした。
ツイッターはだいたい、私としてはフォロワーさんと楽しくおしゃべりできれば、ものを書くための精神衛生上好ましい、からやっているというわけで、確かにSNSでマーケティング、ブランディングということを知らないわけではないけれど、そういうことに熟知していてフォロワーさんが10万人くらいいてすごい人がすごいがんばれば効果があるんだろうけど、私には関係ないし、と思っていたわけです。
ですがこの点は本書で解き明かしてくれたほんの一部で、本当のポイントは次の点です。
つまり、他の多くの事と同様に、そこに必然性があればやれないはずがない。逆に言えば合理的にやりたい、やらねば、というところまで至ってないのであり、多くの物書きが同じような状況にあるのではないかと思う。
まさにそうです。そのとおり。そしてどうしてそうなるかというのも本書にコンパクトにきっちりまとめられています。ですから、そういうことで悩んでいたり考え込んでいたり興味がある方にはオススメです。