佐々木正悟のメンタルハック

メンタルハックをテーマにおいたビジネス書作家・佐々木正悟のブログです。ビジネス書作家のワークスタイルを中心に書いていきます

Evernoteとタスクシュート

動物行動学の視点からは、「空間や時間が、ホモサピエンスという動物種の脳によって生み出されている感覚にすぎない」ことは当然だと考えられる。それらの感覚は、ホモサピエンスが生存し繁殖する上で有利だったから生じた脳の働きにすぎない。  いっぽう、だからこそ、ホモサピエンスの生存・繁殖に有利にならないような空間や時間に関連する思考を、リアリティーをもって感じることはできない

 

ヒトの脳にはクセがある―動物行動学的人間論―(新潮選書)
ヒトの脳にはクセがある―動物行動学的人間論―(新潮選書) 小林 朋道

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たとえばTaskchuteのようなツールの、何が実に独特かというと、作業にかかる時間というのは直感的には把握できず、それを実測してみると、自分が思い描くような時間の使い方というのは、決してできるものではないと思い知らされるようなところにある。

たとえばEvernoteのようなツールで2週間前に詳細に記録しておいた日記を読んでみると、「今日のこれから起こること」はほとんど予言されているかのようにすでに経験済みであるということがしばしば分かる。脳はそういうことをおそらく意図的に排除している。

どうしてこういうことになっているかというと、タスクシュートで「必須」の、終了予定時刻を事前に知るとか、作業にかかる時間を見積もるといったことは、5万年前のホモ・サピエンスが生存するうえで、ぜんぜん必要なことではなかったからだ。

また、子ども時代にあった大事なことや、昨日槍で夫に刺されそうになったことなどを「よおく記憶しておく」ことは生きるうえで役に立っても、昨日食べたものやその時の会話を正確に記憶しておく意味はまったくなかったに違いない。だからEvernoteにどんどん取り込むことのできる記録のようなものを、脳は記憶できない。

ホモ・サピエンスの脳の「知っている世界」には偏りがある。しかしそれを使っている本人は、外界をビデオカメラのように記録している気になっている。外界にあって、活用すれば利便性の高まる情報を取り込むための道具が欲しい。ただし、それを取り込んだ道具は、外界にはあって、知覚には取り込みにくく、しかし取り込んだうえではヒトの偏った脳でも認知・活用できるようにしてもらう必要がある。

そんな要求から赤外線スコープのようなものができたし、原始的には砂時計だってそうだし、EvernoteやTaskchuteもまた、そうなのだ。