佐々木正悟のメンタルハック

メンタルハックをテーマにおいたビジネス書作家・佐々木正悟のブログです。ビジネス書作家のワークスタイルを中心に書いていきます

不思議な国には魅力があるのか?

むかし、ザナドゥをプレイしてその素晴らしさに魅せられて夜も眠れなくなった頃に、「どうしてこのゲームがこんなに面白いのか?」の説明を大人に求めてみたが、納得のいく答えがまったく得られなかった。

私の周りにいた大人たちがたまたま無知だったのかもしれない。もしそうだったら、運が悪かったと言えよう。

しかし、「『ザナドゥ』はなぜこんなに面白いのか?」という疑問が頭を占めだしたころ、不意に「どうして『不思議の国のアリス』はあんなにつまらないのか? にもかかわらず大人はあれを必読書などにあげているのか?」という疑問が頭をよぎった。

この「アリスはなぜつまらないのか。にもかかわらず(どこでだか)人気を博しているのか?」という疑問についても、納得のいく答えは得られなかった。

そしてまた「なぜ自分は『ザナドゥ』について頭を悩ませたときに、『アリス』のことを思ったのか?」という疑問がわきおこった。これについては前2つの疑問よりは、答えらしきものが得られた。「どちらもファンタジーである。そして、大人が言うには正悟はファンタジーが好きだ」であった。

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「正悟がファンタジーが好き」はバカげている。私は「なぜ『アリス』はつまらないのに人気があるのか?」という疑問を先に発したのだ。アリスは子供のころ3度読んで、3度ともつまらないと感じた。ファンタジーならなんでもいいわけではないのである。

以上のすべての疑問にかなりの程度納得のいく答えを示してくれたのは、河合隼雄さんだった。それはもう私が大学になってからだ。なんであんなに待たされたのか。本読みでない人間には、こういう不幸がある。

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河合隼雄さんは「集合無意識」というユングが発明した概念で、私を納得させた。たまたま、ホントにたまたま、私の大学時代のゼミの教官が「集合無意識」で物事を説明するのが得意だったのも幸いし、同時に不運なことに、だいたい私はそれで納得してしまった。

大勢の人に何かを伝えようとしたとき、あるいは子どものような物わかりの悪い連中に物事をうまく伝えようと思ったら、「象徴」が役に立つ。

悪いヘビは、とても悪いやつだから、楽園にいた先祖をそそのかすなんてことをするくらい悪いんだから、すごい悪いヘビはドラゴンみたいなものだから、特別な刀でもって、やっつけてやる必要がある。

これで子どもは納得する。大人は納得しないにせよ、言葉が通じないくらい縁遠い人間でも、このくらい「単純な」話なら理解される。

で、なぜこの話はそう簡単に受け入れられるのかというと、みんなが無意識のうちに共有している「集合無意識」の中で、「ヘビはとってもおそろしくて悪い」という受け入れやすい前提があるからだ。聖書のヘビも、ヤマタノオロチも、キングドラゴンも、ぜんぜん違う時代に、ぜんぜん違うところに住んでいる人たちがみんなそろって「ヘビ悪い」ということを受け入れているから、あれで納得される。

大昔から、世界中の人類が共有している「知識」なのだ。

ヘビ、悪い、おそろしい。

でも、なんで?

私は愚かにも、大学生時代には、この疑問を発さなかった。人類が無意識のうちに、前提段階として受け入れている集合無意識は、人が人である以上、そういうものだとすんなり受け入れられるからこそ、「物語」として幅広く愛される。神話とか童話とか、物わかりが悪い相手向けのものである。

その中では、魔女、悪い。ヘビ、悪い。クモ、悪い。そしてそういう「悪い連中」を退治しに行くには、でもなぜか現実世界を歩き回ってもムダで、「不思議の国」に出かけて行く必要がある。

このへんまで来てようやく「アリス」と「ザナドゥ」の共通点ぽいものと、その魅力らしきものが見えてくるわけだけれど、実際問題として考えてみれば、「不思議の国」に魅力的な要素は一切ない。入りにくいうえに入った先でも、意味不明の法則が渦巻いているうえに、君臨している親玉が大蛇だったり大蜘蛛だったりするようなひでえ世界なのである。