佐々木正悟のメンタルハック

メンタルハックをテーマにおいたビジネス書作家・佐々木正悟のブログです。ビジネス書作家のワークスタイルを中心に書いていきます

「みんなと仲良くなる」のは難しくないのに、人間関係が難しい理由

受話器を取って相手の声音を耳にしたとたん、明らかに相手は怒っているようだ、ということは大半の人が即座に察知すると言われます。「人の気持ちが分かってない」と言われがちな私でも、この能力はあります。

この「察知」を可能にしているのは『ファスト&スロー』でいう「システム1」です。システム1はとかくこのように、意識がのぼる前に何かを「察知」したり「直感」する能力に長けています。

 

ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
 

 

逆に「熟慮」を要することや、「しっかりと分析」しなければならないことは、まずできません。やれたとしても、間違います。

人は「みんなと仲良くなる」能力をほぼ生得的に備えている

私にはもしかしてそれすら欠けているのかもしれませんが、どうやら人間は生来「誰とでも仲良くなる」なら、そう難しくはないらしいです。

『人の心は読めるか?』(早川書房)はこのテーマを中心に沿えた珍しい心理学本ですが、のっけから面白い実験結果を報告してくれます。

 

 

人の心は読めるか?──本音と誤解の心理学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

人の心は読めるか?──本音と誤解の心理学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 
人の心は読めるか?

人の心は読めるか?

 

 

本書によると、私たちは、自分が属するコミュニティ全体に、好かれているか嫌われているかは、よくわかるようです。

学校のクラスのみんなが自分をどう思っているかとか、会社の同僚全体にどう思われているかとか、それらについての予測は、だいたいのところ正しいようです。

しかし、特定の誰かが自分の事をどう思っているかとなると、赤の他人が当てずっぽうを言ったのと、あまり変わらない予測しかできないらしいのです。早い話が予測力がほぼない。

これと、冒頭の「システム1」の能力を考え合わせてみると、どうも私たちは「みんなと仲良くなる能力」しか持ち合わせていないようなのです。

「システム1」は相対的にシンプルな脳機能です。誰かが怒っているか笑っている悲しんでいるかを察知する。それは世界共通であることを心理学が発見し、これは有名になりました。

つまり、アフリカに行っても、北極に行っても、相手が人間である限り、どんな気持ちでいるかはだいたいのところ、わかる。これは特定の誰かの気持ちを読むより、遙かに広範囲に適用できる「法則」なのです。

また、システム1は「慣れ親しんだ人」に「好感を持つ」という「単純接触効果」に強い影響を受けます。ロバート・ザイアンスの発見したこの事実がいっていることは要するに、「何度もこの人に会っているが、危険な目には遭わなかった。安全な人だ。安全なのは良いことだ」というだけのことです。

このように、所属するコミュニティでうまくやっていける能力を、ほとんど「生来」備えているのに、私たちがもし人間関係でうまくいかないとしたら、誰か「特定の人と」仲良くなろうとしているから、という気がします。

あるいは「特定の仲良くできない誰か」のことばかりを気にしているせいかもしれません。

残念ながら、人は「狙った特定の人間とだけは仲良くなる」などといった能力を備えていない。少なくとも「生来」は備えていないようです。特定の誰かの気持ちを読むとなると「とんちんかん」だし、それをしっかり分析するとなると、仕事をしたがらない「システム2」を呼び出す必要も出てきます。

そもそも「単純接触効果」など、「恋人作り」にも婚活の役にもたちません。これは大学時代の私の痛々しい経験から、はっきりしています。好きな人にひたすら「単純に接触する」をくり返していても気持ち悪がられるばかりでした。

それじゃどうしたらいいのかと言われても私にはなかなか応えられないのですが、少なくとも「特定の誰かに好かれればいいから。そのコミュニティ全体には無視されてもいいから」という戦略は悪手であり、その逆が好手かもしれません。

「みんなにいい人だと言われるだけでは十分じゃないのだ」というお気持ちは分かります。でもまずはきっとそこからなんです。