佐々木正悟のメンタルハック

メンタルハックをテーマにおいたビジネス書作家・佐々木正悟のブログです。ビジネス書作家のワークスタイルを中心に書いていきます

「自分が自分じゃない」のなら何をやっても落ち着けない

30代の男性
「『恨む』とか『なんでだ』とか喪失感とか、自分が自分じゃない状況でいたので、『ごめん』なんて言葉は出てこなくて、『なんでだ』って。」

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自分が自分じゃない状況」っというのは一体何なんだろう、と考えさせられますが、逆に「自分が自分である」とはそもそもどういうことなんでしょう?

人間の意識だとか心は「統合に向かっている」ということになっているようです。なっているようです、というのは、じゃあどのように統一されていて統合されているのかが、ちゃんとした説明を聞いたことがないように思うのです。脳科学精神分析家から「このように、心は統一されています」というコンセンサスの得られた統一見解を、聞いた覚えがありません。

でも統合「失調症」などというんですから、統合=正常だというわけでしょう。

とは言え、分裂がつらい状況であるから、統合が「正常」なんだろうな、というのは想像がつきます。私は慢性的なアトピー持ちのため、「かゆみ」がひどいと、意識が統合されずにイライラのタネになるということは、年がら年中身にしみてわかっています。

「現実」と「意識」は実像と鏡みたいなところがあって、「現実」がどうであっても、意識内容さえ統合されてればいいとか、なかなかそんなわけにはいかないようです。

かわいいわが子が自分のそばにいて、自分に好意のまなざしを向けていてくれるという「意識内容」は、現実にそうでないと成立させられないので、意識の上ではわが子は好意的で家にいるはずなのに、実際にはそうでないとなると、強烈な意識の分裂を生み出して、それを統合させようとすればするほど、苦しい思いをすることになります。

(「ストーカー」というような問題が発生するのは、意識内容の根拠となる経験がしばしば脆弱なせいです。たとえば「あの女性は自分に好意を持っている」という根拠が「ある」のに、現実にはまったくそうではないといったとき、意識の分裂(ひどい苦痛)といった問題が発生しますが、「好意を持っているはず」だという意識の根拠が「1度だけ話をしてその時話が弾んだ」ではいかにも物足りません。それでは「意識内容」と「現実」との間にずれが生じても文句が言えないわけです)。

それほど深刻ではなくても、「そこそこうまくやっていたはず」の会社の上司と、決定的な対立に至ってしまうというようなとき、意識の分裂が起こったりするでしょう。

分裂した意識内容はひどいかゆみのように、常に「統合」の妨げになるため、なにか他のことに注意を集中できなくなります。なにやっていてもあのことが気に掛かる、という意識状態に陥ります。

つまり「自分が自分である」というのは、そういう引っかかりに意識のエネルギーを吸い取られていないような、「正常感」にあると思います。そういう時は「現実」が「意識内容」と、だいたいのところ一致しているという思っていて、安心していられるということです。

上司との関係は良好であり、それを強く否定するような実情は、今のところ現実のどこにも存在していない、というたとえば状況なわけです。

逆にいえば悲観的なようでも、意識内容≒現実の反映という図式をある程度成立させられれば、実は苦しみが和らぐ(理想的な喜びにはほど遠くても)ことはあるわけです。上司との関係も「そこそこうまくやっていたはず」ではなくて、元から相当緊張関係にあったと「思い至る」ことはあるでしょう。すると、もちろん嬉しい話ではないにせよ、「心の傷」はいやされたりします。

30代の男性
「母が『やめなさい』と。
恐ろしい、怖いって思ってるかもしれないって。
そういうことを考えた時に、会いに行くのやめようって思って。
少なくとも僕からは距離をとらないと、彼女(妻)は冷静になれないし、苦しいだろうからって思うように今はなりました。」

去年12月、男性は子どもたちにクリスマスプレゼントを買いました。
しかし、このときは妻に連絡せず贈ることを思いとどまりました。

30代の男性
「いつか『プレゼントほしい』とか、『会いたい』と言ったときに渡せばいいかなって。」

男性は、いつか妻と子どもたちに会える日が来ると連絡を待ち続けています。

上の引用の続きです。これだって心理的には苦しいと思いますし、よく受け入れられたなと感心させられますが、「会えねば絶対に問題は解決しない」となったら、もしかしたら本当に生涯の苦しみになってしまうでしょう。

本当につらいのは心の分裂状態でありますから、統合させるには、現実が変えられないなら、認識を変えるしかないわけです。これは自己啓発でよく言われる上に、非常に安直に言ってくれるものだと思われるものですが、現実的に不可能な認識を抱きつづけることが、いちばん苦しみを生み出すというのはたぶん本当なのでしょう。