佐々木正悟のメンタルハック

メンタルハックをテーマにおいたビジネス書作家・佐々木正悟のブログです。ビジネス書作家のワークスタイルを中心に書いていきます

【精神分析】成功したり健康になるのに「抵抗がある」のは当然である

「抵抗」というのはどうも微妙な言い回しである。精神分析で「抵抗」というと、かなり独特の意味として使われるが、そもそもこうした「独特のフィールドではそれに習熟した人でないと理解しにくい言葉の使い方」というのはいいものではないと思う。法律用語などが典型的だが。

「抵抗してもムダだ」

これなら誰もが意味を理解する。いわゆる常套句に近い。

けれどこの意味で「治療に抵抗してもムダです。あなたはどんなにがんばっても健康にさせられるのです」と言われたら不気味である。

精神分析は、非常に自己啓発に応用されやすい。自己啓発に向かう人には、本来精神分析を必要としている人が数多くいるため、マーケティング的にそういうことになるのである。

あなたは無意識のうちに、「成功することに抵抗しているのだ」などと言われると、「そうかそうだったのか!」と思いたくなるような人が自己啓発に向かいがちだということだ。「抵抗してもムダだ。おまえは成功させられるのだ」と言われて成功するのは幸福だろうか?

ところが難しいのは、成功することに対して無意識のうちに抵抗する、ということは、現にあり得るし、それで幸せになれないということもやっぱりあり得ることなのだ。ほとんど誰の目にも「この人は酒をやめるべきだ!」という事態に陥っている人はいて、そういった人は「健康になる」のに「抵抗する」から、いろんな「サポート」に「矯正される」はめになる。でも総合的に見れば「矯正」された方が本人のためだし、まして周囲のためと言える。

健康になったり、成功したりするのは、とても内心抵抗があるという人はたくさんいる。私にはその気持ちがよくわかるし、自己啓発のメッセージは、明らかに詐術とは言い切れないのである。

 

次のような一節は、「自信過剰」と解釈するより、精神分析で言うところの「抵抗」の一種だと考えた方が、納得しやすい。

 

自分は意志力が強いと思っている人ほど、誘惑を感じた場合に自制心を失いやすいことが研究でわかっています。

たとえば、禁煙を続ける自信が満々な人ほど、4カ月後にはまた吸っている可能性が高かったり、「ダイエットなんてかんたん」とたかをくくっている人ほど体重が落ちなかったりするのです。

なぜでしょうか?

それは、どういうときに、どういう場所で、どうして失敗するのかということを、自分自身でちゃんとわかっていないからです。

そういう人ほど、よせばいいのにタバコを吸う人と一緒に出かけたり、家じゅうにクッキーを置いたりして、わざわざ自分の身を誘惑にさらすようなまねをします。

スタンフォードの自分を変える教室 (だいわ文庫)

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タバコを吸う人と一緒に出かけたり、家中にクッキーを置いたりするのは、自信過剰だからではなく、タバコを吸いたいから、クッキーを食べたいからなのだ。「無意識」と言うが、どこかでわかってやっているに違いない。

精神分析やカウンセリングにおける「抵抗」を学校で習うのは、ものすごくわかりやすい事例である。「無意識に治療に遅刻したり、他の予定のある日にわざと予約をしれてしまう」などと教わるわけだ。

それは「単なる不注意」なのか、「無意識の抵抗」なのかというわけだが、行くかどうするか決めかねているイベントやセミナーを「キャンセルしそうな日だな」と思いつつキャンセル料を取られないことまで確認しつつ予約を入れたりするのは、無意識だろうか?

 何でも「気乗りのしないこと」には「抵抗」がある。台風が来るなら、行くのをやめるのが「当然」だろう。

でも、たとえ「大雨の降る中の自己啓発セミナー」だとしても、「気が乗らない」「気乗りしない」で「常識的な自分の範囲内」におさまっているつもりでひたすら「抵抗」に身を任せているのは、意外に危険なことでもある。血糖値のかなり高い人が家族のためにウチカフェのスイーツをどっさり買うようなのは、意外に危険なことなのだ。

つまり、意識が「成功」や「健康」を求めて邁進するのは確かになにかあぶなっかしいところがあるし、それに「無意識に抵抗」するのは健全なことと言えるけれども、無意識の抵抗に身を任せていると、長期的にこうむるダメージは、想像するより大きい。