佐々木正悟のライフハック心理学

ビジネス書作家・佐々木正悟のブログです。ビジネス書作家のライフハックを中心とした生活ブログです

特殊な環境だと、特殊な戦略が発達してしまう

すると、性的マルトリートメントを受けたグループでは、健常なグループと比べ、後頭葉に位置する「視覚野」(図2‐5)の容積が減少していたのです(図2‐6)。

子どもの脳を傷つける親たち (NHK出版新書 523)

子どもの脳を傷つける親たち (NHK出版新書 523)

 

日常的にイヤなことが続いて、しかもそれから逃れる手段があまりに限られているとき、どうやら「その体験へのコミットを下げる」という戦略がとられるようです。

端的に言うと、記憶力を弱める。これが視覚系に起こることだと、この本では説明されています。

人間は、このワーキングメモリのおかげでさまざまな記憶を呼び起こし、過去の情報と照らし合わせて思考することができるわけですが、メモリには容量があります。

被害者の脳はメモリ容量を減少させることにより、苦痛を伴う記憶を脳内にとどめておかないようにしているのではないかと考えられます。

 

コンピュータと人間がちがうのは、好き嫌いに応じて行動しないわけにはいかないところです。

今のところコンピュータもロボットも「壊されることを恐怖する」という発想を持っていませんが、 人間にはその種の感覚があるため、覚えること・覚えないことにバイアスをかける。だからもしも日常生活そのものが「記憶に値しない」または「記憶するにはあまりにひどい」という場合には、記憶力そのものを機能不全に陥らせる。

そうやって何とかやり過ごせるように自分をチューンナップしてしまうわけです。

これが「言葉によるマルトリートメント」となるとまたちがってきます。そっちは「聴覚系」に問題を引き起こすのですが、今度は「聴覚野を細らせる」のではなく、むしろ太くしてしまうというのです。

すると、言葉によるマルトリートメントを受けたグループは、そうでないグループと比べ、大脳皮質の側頭葉にある「聴覚野」(図2‐10)の左半球一部である「上側頭回灰白質」の容積が、平均一四・一%も増加していることがわかりました(図2‐11)。

こうしてみるとわかるのは「容積が減りすぎる」のも「増えすぎる」のもともによくないということなのです。

私たちはたぶん「適切な情報の取り入れ方」というものへ向かって成長するので、刺激が足りなかったり多すぎたりすると、情報処理に支障をきたす。「適切な」というのは、「その文化的環境で生きるのにほどよい」という意味なのでしょう。